自動運転車の実現にむけた各社の開発を陰で支えている素材が「軟磁性材」だ。軟磁性材とは比較的簡単にN極とS極などの磁極が消えたり反転したりする素材のことを指す。自動運転車に搭載する各種センサの高度化にはこの軟磁性材の進化が必須とされており、名古屋の100年企業などがその開発に取り組んでいる。
■身近に使われている軟磁性材
軟磁性材は磁界が近づくと磁力を持つが、磁界を除くことで磁気を失う。鉄やナノ結晶などが軟磁性材に含まれ、家電やPC関連の事務機器、一般的な産業機器部品でもコイルの素材などとして使用されている。あまりその存在を意識されることは少ないが、今注目の自動運転に搭載する高精度センサにもこの軟磁性材が使われている。
そんな中、創業100年を超える名古屋の大同特殊鋼株式会社(社長:石黒武)が開発を手掛ける高透磁率の軟磁性材が注目を集めている。電動化・自動運転化対応の高感度センサ向けに開発した「MENPC2-S」と「MENPB-S」だ。
【参考】MENPC2-SとMENPB-Sについての詳しい性能は、同社のプレスリリース「軟磁性材で、世界最高レベルの高透磁率を実現」も参照。
この2種類の軟磁性材は世界最高レベルの高透磁率を実現している。透磁率とは「磁化のしやすさ」を示し、この透磁率の高ければ高いほど、センサの感度が高まる。軟磁性材の高透磁化はセンサの小型化にもつながり、自動運転車に搭載するさまざまなセンサ群の発展に寄与する。
【参考】自動運転車に搭載されるコアセンサについては「自動運転の最重要コアセンサーまとめ LiDAR、ミリ波レーダ、カメラ|自動運転ラボ
■大同特殊鋼、技術革新を下支え
パワートレインの電動化に加え自動運転、コネクテッドカー化など、大きな技術革新が行われようとする自動車産業。同社は製造ラインを増設することなどにより生産能力を高め、高機能な素材を供給し続けることで自動車産業の技術革新を支えたい考えだ。
【参考】大同特殊鋼の取り組みについては、大同特殊鋼が2018年6月6日に発表した「大同特殊鋼グループ 2020中期経営計画について」も参照。2020年度までの3年間を実行期間とする中期経営計画の経営基本方針は「機能性に優れた素材で、お客様の技術革新を支える」としている。