愛知県と常滑市は2021年10月20日までに、「あいち・とこなめスーパーシティ構想の実現に向けた提案書」の内容を追記し、国に再提案した。「自動運転車両の緊急事態の発生時にかけつける警備会社等の車両を緊急自動車に指定」という提案を加えた。
■再提案の内容は?狙いは?
この再提案は、自動運転車に緊急事態が発生した際にかけつける車両を、緊急自動車である救急車などと同等の扱いにすることで、いち早く緊急事態に対応できるようにするという狙いがある。
自動運転車の社会受容性を高めようという狙いもある。自動運転車で緊急事態が起きても、駆け付ける車両が救急車のような緊急走行ができれば、現場に到着するまでの時間が短縮できる。こうした点は、自動運転車を社会実装をする際の安心度の向上に寄与するはずだ。
▼あいち・とこなめスーパーシティ構想の実現に向けた提案書(10月15日再提案)
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/363568_1542671_misc.pdf
■あいち・とこなめスーパーシティ構想とは?
「あいち・とこなめスーパーシティ構想」は、中部国際空港島や周辺の地域を最先端の技術やサービスの社会実装フィールドとし、イノベーション創出の拠点化を進めようというものだ。
愛知県と常滑市は目指す未来都市像に「グリーン&イノベーション アイランド」を掲げ、国内最大のモノづくりの集積地という強みを生かし、新たなビジネスを創出し続け、世界をリードする国際観光都市になることを目指している。
2021年4月に提案書を提出済みだが、同年8月に開催の国がスーパーシティの区域指定の原案を検討する「第1回専門調査会」を経て、このたび新たな規制改革提案を盛り込み再提案したという。
■緊急自動車に指定されたらどうなる?
冒頭でも触れたが、再提案における新たな提案項目として、「自動運転車両において、交通の安全と円滑を図るために緊急の必要が生じた場合であって警察官から求められたときに、かけつける警備会社等の車両を緊急自動車に指定し、他の緊急自動車と同様の取り扱いを可能とする」が盛り込まれている。
緊急自動車に指定されると、以下の緊急走行が認められるようになる。道路交通法の条文をそのまま引用しよう。要は、救急車と同じように、信号が赤でも交差点に進入できたり、他の自動車に道を譲ってもらったりできるようになる。
【道路交通法第39条】緊急自動車(消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。以下同じ)は、第十七条第五項に規定する場合のほか、追越しをするためその他やむを得ない必要があるときは、同条第四項の規定にかかわらず、道路の右側部分にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。
【道路交通法第39条 2】緊急自動車は、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない。この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない。
【道路交通法第39条】交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ)に寄つて一時停止しなければならない。
【道路交通法第39条 2】前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。
■愛知県が社会実装へ一歩リードか
今回のような提案内容はあまり耳にしたことがない。それだけ愛知県の取り組みが進んでいると解釈することができそうだ。事実、愛知県は他の都道府県に先駆けて自動運転の実証実験を進めてきた。
さて今回の提案は国に認められるのか。提案の行方に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「愛知県の「ステーションAi」、将来的に自動運転バスの拠点に?スタートアップ支援拠点」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)