スズキが「ジムニー」を自動運転化!過酷環境に対応

豪企業Applied EVと共同開発

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過酷環境対応モデルのBlanc Robot=出典:スズキプレスリリース

スズキが四輪駆動車「ジムニーノマド」をベースにした「自動運転電動台車」とも呼べるモビリティを開発している。2025年12月初旬に東京ビッグサイトで開催された「2025国際ロボット展」に展示され、驚いた来場者も多かった。

そのモビリティとは「Blanc Robot(ブランクロボット)」。物流・農業・工場搬送・建設現場などの課題解決を目指し開発された新世代ロボットプラットフォームだ。ジムニーノマドのラダーフレームを採用し、過酷な環境下でも安定した走行性能を発揮するという。

この製品は、スズキとオーストラリアのスタートアップであるApplied EV(アプライドEV)が共同開発した。両社は2023年3月に、自動運転可能な電動台車の開発に関する覚書を締結している。

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■ジムニーノマドがベース

Blanc RobotはEVアーキテクチャを基盤に、柔軟なモジュール構成と高い耐久性を実現した新世代ロボットプラットフォームだ。自律走行技術やAI(人工知能)、通信システムとの統合により、産業現場に最適なロボットソリューションを提供することができる。

2025国際ロボット展では、鉱山など高リスク現場向けに視認性強化や安全装備を搭載した「過酷環境対応モデル」と、カスタマイズ可能な配送ポッドを備え、物流や搬送用途に対応した「現場配送モデル」の2つが展示された。

現場配送モデルのBlanc Robot=出典:スズキプレスリリース

■Applied EVとの関係を築いてきたスズキ

スズキとApplied EVは、数年にわたり関係強化を行ってきた。

スズキは2021年9月にApplied EVと基本合意書を締結し、将来の協業可能性を検討してきた。2022年9月にはApplied EVへの出資を発表。この出資を通じて両社の関係をさらに強化し、次世代モビリティ用ソフトウェア関連技術の共同開発の推進や事業シナジーの実現を目指すとしていた。

そして2023年3月には、Applied EVと自動運転可能な電動台車の開発に関する覚書を締結した。「ジムニー」のラダーフレームをベースに、Applied EVの自動運転車両プラットフォーム「Blanc Robot」を、統合制御システム「Digital Backbone(デジタルバックボーン)」で制御する電動台車の開発を行う。また、電動台車の生産および普及に向けたビジネスモデルの開発やブランド力の向上にも取り組む計画であった。

さらにこの共同開発の合意に先立ち、スズキのコーポレートベンチャーキャピタルファンド「Suzuki Global Ventures(スズキグローバルベンチャーズ)」を通じてApplied EVに追加出資したことも発表している。

出典:Applied EV公式サイト

■ティアフォーと資本業務提携

軽自動車を主力に自動車業界で大きなシェアを誇るスズキだが、自動運転関連分野にも注力していることで知られている。2024年6月には、自動運転OSを開発するティアフォーとの資本業務提携に合意し大きな話題になった。ティアフォーの拡張性の高いソフトウェアプラットフォームと、スズキの「小・少・軽・短・美」を徹底した製造ノウハウを掛け合わせ、新たな自動運転移動サービスの創出を目指すという。

ティアフォーは2025年11月に、経済産業省による令和7年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(自動運転車の公共調達の促進 )」に採択されたことを発表した。この事業では、経済産業省で運行している国会定期便において自動運転による実証走行を行い、都心部における自動運転移動サービスの技術的課題を明らかにするとともに、公共調達による自動運転の推進の可能性を検証するという。

2025年11月20日〜12月19日の期間、スズキのソリオを使用して経済産業省のほか衆議院第一議員会館、衆議院第二議員会館と参議院議員会館を経由する約3.5キロを走行するという自動運転による実証走行を行っているようだ。

■スズキとApplied EVのタッグに注目

2015年設立のApplied EVは、自動運転向けの電動化やソフトウェアなどの技術に強みを持つテック企業だ。オーストラリアのメルボルンを拠点に、倉庫内輸送とラストマイル配送を効率化する自律走行貨物・配送車両の開発を手掛けている。

2025年4月に自動運転ソフトウェア開発企業の英Oxa(旧:Oxbotica)=オクサ=と、自動運転車の大規模な商用展開を可能にするための戦略的パートナーシップを発表した。Applied EVが持つ安全でソフトウェア定義型の車両プラットフォームの専門性と、Oxaの自動運転ソフトウェアが組み合わされ、顧客企業がすぐに自社のオペレーションに自動運転を取り入れるために必要なツールを備えた技術を提供し、2028年までに世界で2倍に達すると見込まれるドライバー不足などに対応していく構えだ。

注目企業のApplied EVとタッグを組んだスズキの躍進に今後も注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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