【悲報】自動配送ロボ、エレベータの扉に挟まる デジタル庁事業

統一ルールなどの必要性

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デジタル庁発注の事業「複数モビリティの分散協調運行のための基盤構築に関する実証調査」の中で、自動走行ロボットがエレベーターに挟まれる事案が発生したという。

実用化が始まった自動走行ロボットだが、さまざまな種類・メーカーのロボットがさまざまな環境下で同時に稼働する未来を考えると、まだまだ課題は山積しているようだ。

同実証の概要を通し、複数モビリティによる分散協調の必要性に迫る。

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■実証の概要

さまざまなロボットが分散協調可能なシステム構築へ

京都スマートシティ推進協議会は2025年2月~3月、デジタル庁が発注した「複数モビリティの分散協調運行のための基盤構築に関する実証調査」に基づき、3回にわたり実証を行った。

目的は、「分散協調」システムの構築だ。現状、複数モビリティの協調制御の技術・インフラ基盤が整備されておらず、同一空間で複数事業者による複数のモビリティが安全運行するためのモビリティに関する制度・ルールの整備が進んでいない。特定システムの管理下で、単一ロボット運行事業者によって自社の複数ロボットが制御されている状況だ。

ここに、特定エリア内において複数の運行事業者のロボットが同一ルールのもと走行する「分散協調運行基盤」を整備することで、自動運転モビリティサービスの安全上の問題を解決し、ロボット運行事業者視点での運用・導入コストに見合った収益性へ効果をもたらすことが可能になるという。

運行制御システムの異なる複数事業者の複数モビリティが同一空間で安全に自律運行し、ロボット運行事業者の負荷を低減する仕組みが「分散協調」だ。この構築に向け、2023年度には分散協調アーキテクチャの可能性や課題が検証された。

2024年度は新たな実証実験を実施し、異なるロボット運行事業者間での協調を促進する制度的枠組みや外部環境データの連携方法の検討を進めた。

公道外の走行を前提としたロボットを中心に、主に歩道を走行可能な低速・小型ロボットもスコープした。公道である歩道と公道外では前提となる標準・法令等が異なるため、個別に検討を進めている。

第1回目の実証では、実証シーンの全網羅とともに第2回に向け各システム・モビリティが正しく動作するかを個別シーンごとに確認した。一般公開された第2回は、前回の残課題解消やそれぞれのシーンを連続的に実証することでリアルなユースケースを再現し、課題を洗い出した。

第3回は複数台のロボットと人を同一空間で自律的に走行・移動させることで、想定しない問題を洗い出したという。

▼複数モビリティの分散協調運行のための基盤構築に関する実証調査研究 業務報告書(概要版)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/9f4e70e2-2335-4181-8293-258c12549d31/a743b102/20250409_policies_mobility_report_01.pdf

KeiganとFUTUREのロボットを活用

第1回目は、京都府内のけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)で自動走行ロボット間の協調運行における問題の洗い出しを実施した。対策となる共通ルールの有効性の検証を行うため、ロボットの屋内・屋外での協調運行や、進入禁止エリアの有無などの条件を加えることで複数シナリオを再現した。

ロボットは、KICKに自社を構えるKeiganとFUTUREが提供した。Keiganはソフトウェア開発、FUTUREはロボット事業などをそれぞれ手掛けているスタートアップだ。

狭路や横断歩道、自動ドアなどでの共通ルールを想定し、マニュアル操作のもと両社のロボットを走行し、順守すべき共通ルール仮説の実効性について検証を進めた。

また、協調運行するため、協調運行データ連携基盤から共通の進入禁止エリアを提供し、各ロボットがデジタル上に設定された進入禁止エリアを避けて走行できるかなどルート設計可否の検証なども実施した。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

アイサンテクノロジーの自動運転車も協調運行に参加

一部一般公開された第2回の実証には、京都スマートシティ推進協議会とKeigan、FUTUREのほか、NTTコミュニケーションズ、TOPPAN、アイサンテクノロジー、ソフトバンク、ダッソー・システムズが参加した。

自動走行ロボットと自動運転車モビリティ間の協調運行における課題の検証を行うとともに、配送ユースケースを一連で再現し、ビジネスオペレーション上の課題の洗い出し、対策の実行性検証を行った。

ロボットアームを用いたロボットと自動運転車間の配送物の受け渡しの検証と、自動運転車による配送サービス、ロボットの屋外走行時の協調運行基盤との情報連携の検証、2体のロボットの協調運行の検証、ロボットの自動ドア通行の検証、複数ロボットの協調運行による屋外・屋内をまたいだ配送サービスの検証――など、多岐に及ぶ実証を行ったようだ。

KeiganとFUTUREが提供する自動走行ロボットに加え、アイサンテクノロジーが提供するゴルフカート型自動運転車が導入されている。

NTTコミュニケーションズは運行システムの構築やデータ連携基盤の追加構築、TOPPANは運行システムの構築、アイサンテクノロジーは位置情報連携基盤の構築、ソフトバンクは通信インフラなどの要件検討、ダッソー・システムズはデジタルツインによる検証結果の可視化をそれぞれ担っている。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

3回目の実証では、6台のロボットと一般参加者が混在する中で実証を行い、従来想定していなかったロボットに発生し得る問題を洗い出したという。KeiganとFUTUREのほか、非公表の清掃ロボットなども使用されたようだ。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

エレベーターに挟まれる事案も確認

複数ロボットを使用した実証などの結果、以下の問題が発生したという。

ロボットの割り込みによるロボット同士の接触

2台のロボットが走行中、片方のロボットがもう片方のロボットを追い越し後、追い越したロボットの前に割り込み、追い越されたロボットが追い越したロボットの死角に進入してしまうことでロボット同士が接触する

通路などの狭所での走行時のロボットのスタック

2台以上のロボットが走行中、背後にロボットがいて後退できなかったり、回避機能がないなどの理由で回避不可能であったりするため通路などの狭所でお見合いが発生し、両ロボットがスタックする

ロボットの待機位置への進入不可

ロボットが待機位置へ進入する際、すでに他のロボットが待機位置にいることでロボットが待機位置に進入できずスタックする

自動ドア付近走行時のロボットの自動ドアへの接触

複数ロボットが自動ドアを通過する際や、ロボット以外に人が通過する際、ロボットの通過速度に対して自動ドアの開閉が間に合わず、ロボットが自動ドアに衝突する(※実証では未再現だが、事業者ヒアリングを参考に記載)

進入禁止エリアへの進入(物理)

ロボットが進入禁止エリア(物理)周辺を走行中、進入禁止を示すコーンなどが黒色・透明色・細い形状などのため検知できず禁止エリアに進入してしまう

3台以上のロボット走行時のロボット間の接触

3台以上のロボットが走行中、ロボットが右左折を行った際、側面や背面などロボットの死角から別のロボットが進入し、ロボット同士が接触する

自動ドア付近走行時のロボット同士の接触

自動ドア付近ではロボットは走行路の中心近くを走行するためロボット同士の距離が狭くなり、当該ルートを走行するロボットの走行を妨害し接触しかけた

横断歩道での他モビリティとの接触(信号機のない横断歩道・駐車場内の横断歩道など)

信号機のない横断歩道でロボットが一時停止せずに横断歩道を横断したことで、車道を走行するモビリティと接触しかけた

進入禁止エリアへの進入(デジタル)

人が急に飛び出してきたことで、ロボットが進入禁止エリア(デジタル)に入り込み、動作不可となった

ロボットとエレベーター扉の接触

ロボットがエレベーターに進入する際、ロボットとエレベーターが連携していなかったため、エレベーター扉が閉まりエレベーター扉に挟まれた

仕様の異なるさまざまなロボットが同一エリアで走行する場合、一定のルールを設けなければ接触・スタックする可能性が飛躍的に増すようだ。

また、自動ドアやエレベーターなどの設備ともしっかり連携しなければ、扉に接触したり挟まれたりするリスクが生じるようだ。タワーオフィスやホテル、マンションなど他所で行われている実証やサービスでは、基本的にこうした連携が図られている。

今回エレベーターに挟まれた機体が、KeiganのロボットなのかFUTUREのロボットなのか、あるいは非公表のモデルなのかは不明だが、実証ではあえて建物の設備と連携せず、それによりどのようなトラブルが生じ得るかを調査したものと思われる。

つまり、連携しなければこうなるぞ!……という事例を出してくれたのだ。ロボット同士の連携も然りで、統一ルールのもと協調した制御を行わなければトラブルが発生することを示した実証と言える。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

準進入禁止エリアや追い越し禁止エリアの設定などが必要に

各トラブルへの対策としては、進入禁止エリアへの進入(物理)については、進入禁止エリアを定義し、空間IDにのせてベンダー運行システムへ配布する方法や、物理的に進入禁止エリアを規定する障害物にARマーカーを用いて進入禁止エリアを設定する方法、板状の障害物などロボットが判別できる障害物を設置して物理的に動線を制限することなどを挙げている。

デジタル面での進入禁止エリアへの誤進入対策としては、走行不可となる進入禁止エリアに進入しないようにするため緊急回避時のみ進入可能となる準進入禁止エリアを設定する案が示されている。

通路など狭所におけるロボットのスタックについては、狭路をリソース(ロボットの円滑な通行のため施設内で利用が制限される空間)と定め、RFAの規格に沿って運行する。

横断歩道での他モビリティとの接触に対しては、道路・通路を横断する際、信号機付きの横断歩道・公道外の歩道の走行を原則とする案を挙げている。信号機のない横断歩道は進入禁止にしてしまうのだ。

自動ドア付近走行時のロボット同士の接触に対しては、自動ドア周辺を追い越し禁止エリアとして設定することを挙げている。ある意味人間と同様と言える。

ロボットと人との接触に対しては、ロボット周辺での人の動き方の推奨案をまとめたガイドライン(リスクアセスメント)を整備することや、ロボットの上に旗を立てたり音声を流したり、右左折時にウインカーを出すなど運用を変更する案を示している。

屋内外でさまざまなロボットが共存可能な共通ルールが必須

配送・清掃・警備など各種サービスがロボット運行事業者によって展開される前提において、今後、屋内の自動ドアやエレベーター付近、屋外の通路など公道外における共通ルールの検討が求められる。

民間による早期サービス立ち上げに適するユースケースを定めた上で、配送管理を担うプレイヤーらも巻き込み、複数の屋内・屋外をまたぐエリアにおいて、複数の事業者による複数のロボットでのサービス提供と、他モビリティとの連携によるサービス提供を題材に実証を行うことが有効としている。

今後、協調運行のモデルとその実現に必要な共通ルール・共通ツールの要件を公道外を中心に検討する予定で、公道外の対策の方向性はロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)とともに検討を進め、また公道(歩道)などに関する対策の方向性については、今後の実証結果を踏まえ、必要に応じて関係団体からフィードバックを得る予定としている。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

■【まとめ】各種ロボットが守るべき共通ルール策定は必須

現状、進入禁止エリアの指定方法や割り込み方法などは、各開発事業者が独自に設計しているものと思われる。個別に設計されたロボットを同一エリアで稼働する場合、トラブルを防止するためにはいずれかがプログラムを修正しなければならない場面も出てくるだろう。

共通のルールはやはり必須で、こうしたルールがあらかじめ規格化されることが望ましい。設計段階でルールを盛り込むことで、効率的な開発につながる。

業界団体としては、ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)がエレベーター連携規格を策定するなどすでに動きを見せているが、こうした活動がさらに広がっていくことに期待したい。

【参考】ロボットフレンドリー施設推進機構については「自動運転ロボ×エレベータ、規格策定で連携容易に」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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