水上バイクをベースに開発された無人艇(マリンドローン)が、遠隔操作により無人航行を実現した。この実証実験を行ったのは、一般社団法人日本マルチコプター協会(JMA)だ。2024年9月2日に日本初となる特殊小型船舶の遠隔操縦化による無人航行を成功させた。
■無人艇化した遠隔操作可能な「マリンドローン」
2018年に設立されたJMAは、革新的なドローン技術を活用して人材育成に力を注ぎ、地域社会への貢献を追求している団体で、国土交通省登録講習機関でもある。
今回の実証実験では、JMAの特許である「水上監視システム(特許第7017821号)」を使用した、特殊小型船舶(水上オートバイ)の遠隔操縦化後の評価を実施した。水上バイクを基に無人艇化した遠隔操作可能な水上ドローンを用いている。
実証では、FPV(First Person View)による制御能力や操縦の安定性や、無人航行中のマリンドローンから送られた映像の視認性などの評価を行った。その結果、約200メートルの距離において安定した遠隔操作とリアルタイム映像転送が確認されたという。
無人艇化した遠隔操作可能な水上ドローンは「マリンドローン」として、密漁監視や養殖管理、海上輸送、救助活動のほか、海洋調査などさまざまな分野で活用していく計画だ。
■国内外で進む水上モビリティの自動化開発
水上モビリティの無人化・自動化の取り組みは、最近地味にホットな領域だ。
船の自動運転技術開発を行うスタートアップであるエイトノットも、水上モビリティの自動化に取り組んでいる企業だ。同社はロボティクスとAIの専門家集団として、小型船舶向け自律航行技術開発を中心に「海のDX」と「船舶のロボット化」を推進している。
同社は2024年3月に、瀬戸内海の事業者が運航する観光船へ小型船舶向け自律航行プラットフォーム「AI CAPTAIN」を初導入した。観光用途の船舶への搭載は初のことで、人手不足や後継者不足などの船舶関連事業者が抱える課題解決に寄与していく。
また2024年5月からは、小型船舶の一般的な推進機である船外機エンジンに対応したAI CAPTAINの提供を開始した。これにより、より多くの船舶に自律航行システムの導入が可能となった。
海事産業におけるイノベーション創出を目指すMarindowsは、ロボットEV船「DroneSHIP」量産化プロジェクトを2023年9月に始動させた。船をロボット化することにより、船員の作業が減るだけでなく、船員として求められる技量や経験値は大幅に軽減される。そのため20代でも熟練の船長や機関長と同等以上に、安全で効率的な運航が可能になるという。
ロボットEV船の量産化により、船の仕事を「キツい・汚い・危険」の3Kから「カッコいい・稼げる・革新的」の新3Kへと変革することを目指す。
海外においては、フィンランド企業Callboatsが世界初の自動運転水上タクシーサービスを2023年9月に開始している。この水上タクシーはソーラー充電式の電気ボートとなっており、大幅なコスト削減と人員不足の解消が期待されている。
【参考】関連記事としては「AIが観光船を操縦!エイトノットが発表、自律航行技術を導入」も参照。
■マリンドローンの完全自律航行も目指す
JMAは開発したマリンドローンについて、2024年10月に開催される「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2024」などの業界イベントに出展し、さらなる認知拡大を図る。またニーズに合わせた一般企業へのアピールのほか、防衛省や消防庁向けの導入も目指していくという。
新たな運用のフェーズとしては完全自律航行も開発視野に入れており、自動航行プログラミングソフトとの連携により、さらなる効率化を行っていく。さらに、水上バイクメーカーとの協業も視野に入れているという。なおJMAではマリンドローンをさらに発展させるために、共同開発企業を募集中だ。
各社が取り組む水上モビリティの遠隔操作や自動化。海の安全管理や人材不足への対応、サービス・話題性向上など、それぞれの目的は違うが、陸上を走る自動運転車と同じく技術開発は急速に進んでいる印象だ。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)