職種別の「年収上昇幅」ランキングにおいて、1位となったのは「技術職(組み込みソフトウェア)」──。2022年度の510万円から2023年度には524万円と、14万円のアップとなった。
パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、「2023年度 職種版 決定年収レポート」を2024年6月14日までにに発表した。
組み込みエンジニアが1位になった背景には、「IoTの拡大」「自動車産業の進化」「スマートファクトリーと産業自動化」などがあるとされており、これらには自動運転、自律走行、などの技術が関わってくる。この技術開発が進んだことが、組み込みエンジニアの年収を押し上げていることが考えられる。
【参考】関連ページとしては「自動運転・MaaS業界特化型転職支援サービスへの登録フォーム」も参照。
■組み込みエンジニアが14職種中トップ
2022年度と2023年度の決定年収を比較した「職種別 決定年収上昇幅ランキング」では、14職種をランク付けしている。なお決定年収とは、転職者を受け入れる企業が採用決定時に個人に対して提示する年収のことを指す。今回のレポートにおける決定年収額は全て平均値となっている。
1位となったのが「技術職(組み込みソフトウェア)」で、14万円上昇した。dodaでは、IoTやAI(人工知能)の普及に伴い、自動車や製造、医療、エネルギーなど幅広い分野での組み込みシステムの需要拡大により、この職種の争奪戦が激化していることが要因と分析している。
近年、組み込みエンジニアの採用ニーズは大幅に高まっている状況にある。その要因として、「IoTの拡大」「自動車産業の進化」「スマートファクトリーと産業自動化」「医療技術の進歩」「エネルギー効率と環境への配慮」が考えられるという。
現在は自動運転のシステム開発が進み、EV(電気自動車)やハイブリッド車、自動ブレーキ搭載車の生産を拡大していく動きも顕著になっている。自動車産業の技術革新が進むにつれ、組み込みエンジニアの専門知識が一層求められるようになってきている。また製造業では、生産効率向上を目指した産業用ロボットや自動化技術の導入が進んでおり、組み込みエンジニアのニーズが高まっているという。
組み込みエンジニアはさまざまな分野でニーズがある一方で、安全性やリアルタイム性が求められる傾向が強く、かつ開発における制約が比較的多いため、人材が不足していることが多い。また、組み込みエンジニアはさまざまな業界から求められているため、人材獲得競争が激化していることも、決定年収が増加傾向にあることの背景となっている。
■2位以降の業種は?
決定年収上昇幅ランキングの2位は11万円アップの「営業職」と「技術職(化学・素材・化粧品・トイレタリー)」、4位は10万円アップの「技術職・専門職(建設・建築・不動産・プラント・工場)」、5位は9万円アップの「販売・サービス職」であった。
なお、このランキングにおける14職種のうち決定年収が500万円を超えているのは、1位の組み込みエンジニアのほか11位の「企画・管理」「専門職(コンサルティングファーム・専門事務所・監査法人)」、14位の「金融系専門職」のみであった。
組み込みエンジニアはベースとなる年収が高めであることに加え、上昇幅も大きいという結果になった。
■2019年からの5年間で年収はどう変化した?
今回のレポートでは、2019年度から2023年度の決定年収の上昇についても報告している。
全体では、5年間で決定年収は32万円アップした。過去5年間で最も上昇した職種は「金融系専門職」で54万円のアップであった。事業強化のために、デジタル技術や資産運用、プロジェクトファイナンスなどに詳しい人材を求め、経験者採用の比率を上げていることが要因と分析している。
2024年5月に新型コロナウィルスが5類に移行し経済活動の再開が本格化したことで、採用を強化する企業が増えた。その結果、転職時の提示年収を引き上げる動きが顕著になっているようだ。
金融系専門職については、「事業強化」や「人的資本の情報開示」により、採用ターゲットを新卒から中途にシフトさせ経験者採用の比率を上げていることが、アップ幅が大きかった要因と考えられる。
■組み込みエンジニア需要は増加中
実際に採用情報を見ていても、自動運転関連のエンジニア人材は年収が高い傾向にある。企業は、多くの経験や知識のある人材獲得に力を注いでいる。相応の知識などがあれば他業界からの転職も受け入れていることも多い。
開発を進め実用化の段階にある自動運転技術開発では、エンジニア、特に組み込みエンジニアは売り手市場にあるようだ。
【参考】関連記事としては「自動運転求人、前月比68.2%増の1万8,882件 2024年5月調査」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)