自動運転車、高速道での合流「成功率100%」達成 国総研

試験走路での実証実験で証明

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出典:国総研プレスリリース

自動運転車による高速道路の合流で「成功率100%」を達成──。国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)が自動運転車向けの「合流支援情報提供システム」を開発し、このシステムを用いた合流支援の実証実験で見事な成果を出した。

同システムによる情報提供がある場合は、自動運転車は合流部到達前に本線車との車間距離の調整や加速が可能になり、その結果、加速車線長が50メートルの場合でも、合流成功割合が100%であることを実証したという。なおこの結果は、試験走路での実証実験によるものになる。

この「合流支援情報提供システムに関する研究」において、このほど研究者が文部科学大臣表彰を受賞している。

▼「自動運転車向け合流支援情報提供システムに関する研究」の研究者が文部科学大臣表彰を受賞しました |国総研
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya20240423.pdf
▼次世代の協調ITSの実用化に向けた技術開発に関する共同研究報告書
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1245.htm

■「合流支援情報提供システム」開発の背景

合流支援情報提供システムは自動運転車の安全・円滑な本線合流を支援するもので、自動車メーカーや道路管理者などとの共同研究により開発された。

日本の高速道路は連結路から本線への見通しが悪く、かつ加速車線の短い合流部が多く存在する。そのため自動運転車は合流部では、連結路を走行する段階では車載センサーで本線の状況を把握できず、本線合流に向けた制御を開始できない。さらに合流部到達後には、加速車線内で本線車との車間距離の調整や加速を完結することは難しい場合があった。

高速道路での安全・円滑な自動運転を実現するために、本線合流は重要課題で、自動運転車が連結路を走行する段階から本線合流を支援するシステム開発が期待されていたことが開発の背景にあるという。

■路車間通信で直接、自動運転車へ情報提供

合流支援情報提供システムは、本線上流部に設置された車両検知センサーが本線車の速度や位置などを検知し、連結路に設置された情報提供施設から路車間通信(路側インフラと車両との無線通信)を用いて自動運転車に本線車の情報等を提供するという仕組みになっている。

出典:国総研プレスリリース

路車間通信により、ドライバーを介さずに自動運転車へ直接情報提供を行う。自動運転車の本線合流に必要となる標準的な情報をフォーマット化して情報提供することで、多種多様な自動運転車が、システムが提供する情報を活用できるようになっている。

自動運転車は同システムの働きにより、連結路を走行する段階から本線の状況を把握することができる。合流部到達前に本線車との車間距離の調整や加速を行うことで、高速走行している状況においても、本線合流の安全性や円滑性を高めることが可能になる。

■SIPにおいてのシステム実証に成功

内閣府が主導した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において、実道で合流支援情報提供システムの効果を検証する実証実験が行われた。この実証では、実道での同システムによる情報提供が技術的に成立することが実証されたという。

出典:国総研プレスリリース

さらに、国総研は試験走路にて同システムを用いた合流支援の実証実験を行った。その結果、このシステムによる情報提供がある場合、「自動運転車は合流部到達前に本線車との車間距離の調整や加速ができ、加速車線長が50メートルの場合でも、合流成功割合は100%である」ことが明らかになった。

具体的には、加速車線50メートルでシステムによる情報提供がある場合の合流成功率は100%、情報提供が無い場合は成功率86.7%となる。また加速車線200メートルで情報提供がある場合は成功率99%、無い場合は成功率97.3%という結果になっている。

出典:国総研プレスリリース

■技術開発スピードの加速を実感

合流支援情報提供システムの特徴として、「多種多様な自動運転車が本システムの提供する情報を活用することを可能にしている」ことが挙げられている。国を挙げての取り組みで、自動運転の技術開発スピードが加速してきたことを実感する。

【参考】関連記事としては「高速道、「AIカメラ」で落下物検知へ 自動運転実現に向け」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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