一般社団法人九州経済連合会は「九州MaaSグランドデザイン」を策定したことを2023年6月6日までに発表した。
これは、同連合会と九州旅客鉄道、西日本鉄道が事務局の「九州MaaSプロジェクト研究会」で検討していたもので、「九州MaaS」の実現に向け具体的な検討と準備を進めるための全体構想となる。
▼九州MaaSグランドデザイン策定|九州経済連合会
https://www.kyukeiren.or.jp/storage/upload/pdf/20230602140858_plxyoscyrn.pdf
■九州MaaSの目指す姿とは?
九州MaaSでは、九州が一体となり住民や観光客などの移動円滑化や異分野との連携を通じた移動需要の創出に取り組んでいくという。
九州では、コロナ禍や人口減による需要減少、深刻なドライバー不足、マイカー移動の増加、原油価格の高騰により、公共交通事業者の経営状態が厳しく、路線縮小なども余儀なくされる可能性がある。そのため1つの移動手段で乗り換え無しで移動できる範囲は、より狭まるという課題がある。
また、九州は豊富な観光資源を有しているものの、その多くが中山間地域などに分散しており、周遊するには難しい環境であることと、インバウンド消費率が相対的に低いという問題があった。
そこで、アフターコロナの観光需要復活を見込み、観光消費額の拡大を目指すためには、九州MaaSが必要になると考えられている。それにより、モビリティ機能の向上と公共交通の利用促進が期待できたり、観光客が周遊する際に訴求できたりするようなサービスが提供できるという。
■機能や施策はどうなる?
九州MaaSでは、地域住民・来訪者向け「ボーダレス交通」サービスプラットフォームと、交通事業者・自治体など向けデータ利活用プラットフォームの運用などが予定されている。
求められる機能としては、「公共交通の利用促進」「情報発信」「移動環境の整備」「地域消費の拡大」「他分野等との連携等」の5つが実装されるという。
一般利用者にとってMaaS導入における主要メリットとなりそうな「公共交通の利用促進」では、事業者や県境の垣根を越え、多様なモビリティサービスをボーダレスにつなげた経路検索・予約・決済といった機能が搭載される。また観光施設や宿泊施設などの検索や予約、決済とも連動するという。
■九州MaaSのロードマップ
九州MaaSは、2024年3月までに運営主体の設立準備を行う。「九州モビリティサービス利用促進協議会(仮称)」を主体とした運営とし、サービス開始に向けての費用は官民が共同で負担する。負担する割合は、今後も継続して協議していくようだ。
同年4月から夏ごろにかけてのサービス開始を目指しており、2028年3月までには参画社局を60以上とする。最終的に2030年までに参画社局を100以上とし、人口減にも対応できる効率的で持続的な交通モードを実現するためのオペレーションを行うことなどが目標だ。
■日本における大型MaaSに期待
九州全体の交通事業者や自治体などが一丸となりスタートする九州MaaS。面積が広いエリアだからこその需要や新しい取り組みもありそうだ。
特に、中山間地域での移動手段は、具体的にどのようなモビリティが用いられるのか気になるところだ。自動運転バスなども、ゆくゆくは採用されるかもしれない。今後の進捗状況にも注目していきたい。
【参考】関連記事としては「MaaSとは?(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)