自動運転ロボ、「待ち時間」の均等化を研究!オムロンが論文

ロボットの「損」に着目、国際会議で発表へ

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出典:オムロン・プレスリリース

「自律走行可能なロボットに公平性を求める」──といった興味深い研究が進められているようだ。オムロン子会社のオムロンサイニックエックス(本社:東京都文京区/代表取締役社長:諏訪正樹)=OSX=が、自律ロボットに関する主要国際会議で2023年6月1日に発表する。

OSXは、AI(人工知能)やロボティクス、IoT、センシングといった各領域において、社会的課題を解決することを目指し2018年4月に設立された。

自動運転時代が幕を開け、本格的な普及期が到来すると、自動走行ロボットやロボタクシーなどの自動運転モビリティが道路に溢れるようになる。ロボットが増加すればするほど他のロボットと干渉する機会が増え、迂回や停止を余儀なくされるケースも増加する。

場合によっては各ロボットの運行に有利不利が生じ、公平性が担保されない可能性がある。そこで求められるのが「ナビゲーションの公平性」だ。同研究では、公平性と効率性を両立させるアルゴリズムを開発したという。

ロボットに公平性を求めるナビゲーションとはどのようなものか。OSXの研究内容に触れていこう。

■OSXの研究概要
公平遅延マルチロボットナビゲーションを実現

OSXが発表した論文は、「Counterfactual Fairness Filter for Fair-Delay Multi-Robot Navigation」と題した研究だ。直訳すると「公平遅延マルチロボットナビゲーション用の反事実的公平性フィルター」となる。

マルチロボットナビゲーションは、各ロボットが衝突することなくできるだけ早く目的地に到達するための軌道を見つけるタスクを指す。ロボットの遅延に着目し、公平な移動を実現する手法だ。

フードデリバリーやタクシーなどの自動運転サービスにおいては、稼働する複数のロボット・モビリティが衝突することなく目的地へ最短移動できることが重要視される。

しかし、大半のロボットが効率よく目的地に到着できたとしても、大多数を優先したことで特定のロボットのみが遅延してしまうと、サービスにおける利用者の公平性を担保することができなくなる。

複数の自律走行ロボットを有効活用するには、効率的で安全な移動に加え、各自律走行ロボットの待ち時間を均等にすることが求められる。

ロボットの遅れを損失とみなし、公平性と効率性を両立

同研究は、こうした観点から「ロボットがどれだけ損をしているか」といった点に着目し、「ナビゲーションの公平性」を定義する方法にアプローチしている。

他のロボットとの衝突を避けるため迂回や一時停止を行い、最短経路から外れることで生じる最短時間からの遅れ時間をロボットの「損失」とみなし、各ロボットの損失のばらつきの大きさによりナビゲーションの公平性を定義した。

OSXは、現実とは違う架空の状況を想定し、その結果を予測する反実仮想推論を応用したアルゴリズムにより、公平性と目的地に迅速に到達できる効率性の両立を実現したという。

同アルゴリズムにおいて、ロボットは停止して道を譲るか、あるいは進み続けるかの判断を学習する。道を譲ることで他のロボットの損失がどの程度減るか――といった観点に基づいて学習を行うことで、自分自身の行動の貢献度を数値化することができる。

こうした学習方法を用いることで、自分が道を譲る行為が、他のロボットが目的地へ早く到着する助けになる場合にだけ道を譲るという選択をし、それ以外は進み続けるという意思決定を可能にした。これにより、同研究では公平さを維持しつつも効率的に目的地に到着することを実現したとしている。

■ロボット同士がバッティングするケースとは?

実際にロボット同士が譲り合う状況として、どのような場面が考えられるか。

車道を走行するロボタクシーなどは、道路交通法に基づき優先的に走行する際のルールが細かく規定されているため、ロボタクシー同士がバッティングするケースはそう多くない。

では、自動配送ロボットはどうか。歩道を走行する自動配送ロボットや、倉庫内における自動搬送ロボット、飲食店における配送ロボットなどは、台数増加によりバッティングするケースも増していくのではないだろうか。

飲食店の配送ロボットを例にすると分かりやすい。店内の通路は、各ロボットが余裕をもって走行できるよう調整されているが、ロボット同士が楽にすれ違うことが可能か?と言えば必ずしもそうとは言えない。

余程広い通路でない限り、片方のロボットが通り過ぎるまでもう一方が待機する例が出てくるはずだ。一方通行ルールなどを設けることである程度は対処できるが、網の目のように広がる店内全てのルートに優先順位は付けられない。同時稼働するロボットの台数が増えれば増えるほど、ロボット同士がバッティングするケースが増加するものと思われる。

歩道を走行する自動配送ロボットも、バッティングしやすいスポットが出てくる可能性がある。自動配送ロボットが市民権を得れば、歩道の中で歩行者が歩くルートとロボットが走行するルートが漠然と住み分けられていくことが考えられるが、ロボットが走行しやすいルートが確立されれば、全てのロボットが寸分違わず同じルートを通ろうとする。

こうしたケースを考慮すれば、都市部など需要が多いエリアであればロボット同士がかち合うことも十分考えられるだろう。

倉庫内や店内で活用される配送・搬送ロボットはすでに普及段階に達しており、機能を拡充しながら今しばらく右肩上がりの成長を続けていくものと思われる。

歩道を走行する配送ロボットも、道路交通法の改正により導入が容易となった。実証含みではあるものの、本格導入を見据えた取り組みが今後大きく拡大していくことが予想される。

【参考】関連記事としては「自動配送・宅配ロボットの届出・審査の流れ(2023年最新版)」も参照。

■【まとめ】「譲り合い」を考慮した応用技術に期待

厳密には、一部のロボットに致命的な遅延が発生するケースは稀と言えるが、こうした複数台の運行を同時に管理しながら各ロボットにとって最適な経路作成を行う技術は重要だ。

また、ロボット同士に限らず、一般車両や自転車、歩行者、店内の客など、他の交通参加者も含めれば譲り合わなければならないケースは非常に多く発生する。今回の研究は、こうしたさまざまな場面に応用可能な技術となり得るのではないだろうか。

オムロンはドライバーモニタリングやLiDAR、画像処理といったセンシング技術を武器に自動運転分野に関わっているが、新たな領域で関わりを深めていく可能性が高そうだ。

【参考】関連記事としては「地図を自分で作る!オムロンの自動運転ロボに栄誉」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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