米国などで自動運転企業・部門の縮小やレイオフが続く中で、ポジティブなニュースが飛びこんできた。
建機の自動運転に挑戦している東京大学発スタートアップARAV株式会社(本社:東京都文京区/代表取締役社長:白久レイエス樹)=アラブ=は2023年3月13日までに、シリーズAラウンドにおける総額4億円の資金調達について発表した。
■本格的な量産製品の開発へ
今回の資金調達は、東京大学協創プラットフォーム開発を引受先とする第三者割当増資と、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫からの融資によるものだという。
調達した資金により本格的な量産製品を開発し、サービスの立ち上げや自社プラットフォーム技術の横展開をしていくという。さらに、建設・土木業界のように人材不足の課題を抱えている海運や林業、除雪、農業、港湾などの業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)促進も進めていくようだ。
すでに海運業界においては、開発エミュレータ「OCS」の知見を生かした船舶シミュレータのリリースが予定されているという。
OCSとは「Open Construction Simulator」の略で、建機など大型機械の実証実験のリスクを低減させるために、建設機械や現場環境を再現するシミュレータ開発技術を活用する国内初の建機オープンソースとなる開発エミュレータのことだ。
ARAVの代表取締役社長である白久レイエス樹氏は「創業当初から、初期ユーザー様、プロダクトを開発・販売するメンバー、そして株主の皆様に支えられ、建機をはじめとした大型機械の遠隔操作・自動運転化の社会実装を前進させてまいりました」とした上で「今後も、ARAVの発展に向けて邁進してまいります」とコメントしている。
■2020年4月設立の東大発ベンチャー
2020年4月設立のARAVは、建機の自動運転に挑戦している東京大学発スタートアップだ。後付けで建機の遠隔操作ができる同社のソリューション「Model V」は、10~20年以上前に発売された建機にも対応しており、市販の建機84%に対応可能だという。ネット環境があれば、1,000キロ離れた場所からもスマートフォンやタブレットで操作できるようだ。
2021年10月には、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の事業に採択された。インターネット回線を介して遠隔操作が可能な油圧ショベルに同一動作を覚えさせ、作業を自動化させる取り組みをしている。
2022年8月には、建機に後付けで搭載できる遠隔自律装置の見積り注文が可能なECサイトのβ版を公開している。2023年2月には、Microsoftのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されたことを発表している。同社はアジャイル開発と実証実験を繰り返して、さまざまな分野の機械や装置で活用できる、実用的なソリューション群の展開を目指している。
■さまざまな業界のDX促進に着目
建機だけでなく、さまざまな業界のDX促進にも取り組みたいとするARAV。今後の動向にも注目していきたい。
【参考】関連記事としては「Microsoft、お次は日本の建機自動運転化ベンチャーに目をつける」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)