「自動運転」というワードが新聞やネットニュースで頻繁に飛び交うようになり、日本でも社会実装に向けて国会などで審議が行われている。この「自動運転」というワードが交通用語として国会で初めて使われたのはいつだかご存じだろうか。
それは1968年(昭和43年)7月25日、衆議院の運輸委員会の場だった。日本国有鉄道(国鉄)における鉄道事故についての討議の中で、鉄道のATS(自動列車停止装置)についてのやり取り中に国鉄副総裁の磯崎叡氏が発言した。ちなみにこの委員会には、当時運輸大臣だった中曽根康弘氏も出席している。
この運輸委員会では大野市郎委員長が、いくつかの鉄道事故を例に挙げ、ATSの性能が新聞で誤報されているということに触れた。具体的には「ラッシュ時の山手線はブザーが鳴るたびに停車していたらダイヤがめちゃくちゃになるためATSは使われていない」と新聞で誤った情報が報道されていることについて、国鉄のATSに対するPR不足だと追求し、今後の対策について磯崎氏に回答を求めた。
磯崎氏はATSのPR不足を認めつつ、世間の誤解を解くために詳しい説明を行った。ATSは世間では万能な安全装置だと認識されているが、「こういう機械(ATS)は、(列車が)自動運転でない限り、乗務員というものは必ず信号を守り、運転規則を守って運転するものだということを前提としての最後のとりで」であることを強調した。
現在までに「自動運転」というワードは国会で299回発言されている。初めて使用された例のように鉄道分野で使われ始めた言葉だが、現在では自動車分野の交通ワードとして使われることが増えてきた。
最近では、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)に対応させる道路交通法の改正案が提出されるなど、自動運転について国会での議論も活発に行われている。社会実装に向けて、より一層「自動運転」というワードが使われる機会が今後増えていきそうだ。
【参考】関連記事としては「通常国会開幕、自動運転レベル3想定の道路交通法改正案提出へ」も参照。