米電気自動車(EV)大手テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2018年6月18日、従業員宛ての一斉送信メールで、ある社員が業務における「大規模で有害な妨害工作」を行ったことを主張した。
イーロン・マスクCEOが触れた妨害工作とは、製造オペレーティングシステムにおけるコードの不正変更や、テスラの社外秘データの外部漏洩などであるという。妨害工作をした人物を特定できているとも説明。動機については、希望通りの昇進が叶わなかったためだと主張している。
イーロン・マスクCEOはなぜ、テスラ社の株価を下げかねない事案なのにも関わらず、自社の不祥事が結果的に外部に知られることにつながるような行動に出たのか。一部からは、イーロン・マスクCEOの社員に対する「八つ当たり」なのではないか、という見方も出ている。
■幹部流出に2度目の死亡事故
テスラ社ではイーロン・マスクCEOの感情を逆撫でするような出来事が続いている。
2017年には最高財務責任者(CFO)だったジェイソン・ウィーラー氏がテスラ社を去り、販売担当や事業開発担当の上級幹部、最高会計責任者(CAO)の退社も続いた。イーロン・マスクCEOは空いた重要ポストの穴を埋めようと、アマゾンやアップルから技術者を続々採用しているが、流出の流れは止まりそうもない状況が続いている。
イーロン・マスクCEOは2015年当時、EV開発事業に乗り出そうとしていた米アップル社にテスラ社の技術者が次々と引き抜かれたことに対し、「アップルはテスラ技術者の墓場だ」と皮肉を込めたコメントをしている。人材流出がイーロン・マスクCEOにとっての「目の上のたんこぶ」であり続けてきた。
2018年に入ってからは、テスラ車の多目的スポーツ車(SUV)「モデルX」が3月23日に自動運転モードで走行中に死亡事故を起こした。テスラ社としては2度目となる死亡事故だ。この死亡事故はテスラ株の大幅下落の要因となり、テスラの自動運転技術の安全性に懐疑的な見方も広がった。
【参考】テスラが責任を問われている事故については、「自動運転の事故まとめ ウーバーやテスラが起こした死亡事故の事例を解説|自動運転ラボ
■今後のテスラを取り巻く状況は?
ストレスフルな状況が続くイーロン・マスクCEO。最近ではイーロン・マスクCEOが「テスラ消滅を願う組織が多くある」という趣旨の見解を示したことが報道されており、苛立ちはまだ消えていないようにも感じる。テスラ社を取り巻く今後の状況はどう変わっていくのか、注目していきたい。