次世代モビリティ社会の到来を控え、ドライブレコーダーのさらなる活用方法が模索されている。そんな中、東大発AIベンチャーのTRUST SMITH株式会社(本社:東京都文京区/代表取締役社長:渡辺琢真)は2020年9月15日までに、「ドライブレコーダー映像から個人情報を取り除くAI」の開発に成功したことを発表した。
筑波大学大学院の坂本航太郎氏らが考案した技術で、個人情報の取り扱いが注視される中、ドライブレコーダー映像の汎用的な使用を可能にするという。
■ドライブレコーダーの映像の取り扱いには注意が必要
近年、ドライブレコーダーの普及によって交通事故における情報の記録・処理が容易になっている。ドライブレコーダーを搭載することは、事故の際の確認だけではなく、自身の運転の危険なポイントを見直すためにも活用できる。
ただし、ドライブレコーダーに記録される映像には、顔や表札、車のナンバープレートなど、多くの個人情報が含まれるため、取り扱いには注意しなければならない。
事業者が個人情報を取り扱う際には「個人情報保護法」を遵守する必要がある。2020年6月には改正個人情報保護法が公布され、規制がさらに厳しいものとなった。
■「個人情報を取り除くAI」の特徴は?
TRUST SMITH社が開発したドライブレコーダーの映像から個人情報を取り除くAIとは、個人の顔面や表札、車のナンバープレートなどの個人情報に関わる要素を全て自動認識し、該当箇所をモザイクのように自動で消し込む技術だという。
この技術には、大別して2つの特徴がある。1つ目は「オンプレミスでの映像処理」だ。オンプレミスとは、自社の中で情報システムを保有し、自社の設備によって運用することを意味する。新技術では、既存の映像処理技術では困難だったオンプレミスでの処理が可能となり、リアルタイムで個人情報を特定し、取り除くことができる。
2つ目は「高精度な映像処理」だ。独自のライブラリにより、情報量の多い高精度の映像に対しても高速で処理することが可能となる。
■【まとめ】役立つシーンは多い新技術
同社の新技術は、プライバシー面での課題解決に加え、コスト面でのメリットも大きい。
改正個人情報保護法では、長期の保存を行わない顔写真データなどについても開示請求や利用停止請求に応じる義務が発生し、事業者の個人情報取り扱いコストの増大が予想される。しかしAIによりドライブレコーダーの映像から個人情報を取り除くことでその映像は「個人情報」ではなくなり、上記の法的義務から免れることができる。
次世代モビリティ社会において、データ収集は重要な要素だ。ビッグデータとして活用すれば、さまざまなサービスに結びつけることができる。そういった意味でも今回開発された技術の役立つシーンは多いと言えそうだ。
【参考】関連記事としては「運転手の交通違反、AIが発見して会社に通知 日本ユニシス、ドライブレコーダーに新機能」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)