自動運転シミュレーションプラットフォームを手掛けるV-Drive Technologies株式会社(本社:東京都江東区/代表取締役社長:宮地寿昌)の第1期決算公告(2023年3月時点)が、このほど官報に掲載された。当期純損失は1億2,216万円であった。
同社は、内閣府が主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の研究成果を製品化して提供している企業だ。
記事の目次
■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)
▼資産の部
流動資産 154,577
固定資産 23,981
資産の部合計 178,558
▼負債及び純資産の部
流動負債 100,721
株主資本 77,837
・資本金 100,000
・資本剰余金 100,000
・・資本準備金 100,000
・利益剰余金 △122,163
・・その他利益剰余金 △122,163
・・(うち当期純損失)(122,163)
負債及び純資産の部合計 178,558
■SIPの成果を引き継ぐV-Drive Technologies
V-Drive Technologiesは、SIP第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」の研究成果を社会実装するにあたり、BIPROGY(旧社名:日本ユニシス)が2022年9月に設立した。自動運転安全性評価のためのプラットフォーム「DIVP(Driving Intelligence Validation Platform)」を製品化し、提供している。
BIPROGYは2018年からSIPに参画している。自動運転技術の確立に向け、自動運転における安全性確保のための重要課題に対応するためにDIVPコンソーシアムを設立し、産学官のオールジャパン体制で「仮想空間における安全性評価環境の構築」を推進してきた。BIPROGYはこのコンソーシアムのメンバーとして、CGやICTの技術で研究活動に参画し、現実との一致性の高いシミュレーションモデル開発を行った。
SIPでの成果を継承し、自動運転開発やシミュレーションといった新しい分野での事業を行うために設立されたのがV-Drive Technologiesとなる。
■2つの課題の解決に寄与する「DIVP」
自動運転システム開発には、「自動運転車両の安全性評価手法の確立」と「シミュレーションの必要性」という2つの課題があった。その解決に寄与するのがDIVPで、さまざまな交通環境下において、現実空間の実車評価を再現する実現象との一致性の高いセンサーシミュレーションを実現するものとなる。
V-Drive Technologies設立の際に、同社とBIPROGYは、三菱プレシジョンと業務提携している。各社の役割は、V-Drive Technologiesが製品企画開発やユーザー窓口、DIVP製品とサービスの提供を、BIPROGYがDIVPに関する知的財産の帰属先と管理を担うというものだ。
三菱プレシジョンは、仮想空間走行環境モデル作成プログラム「SDMG(Space Designed Model Generator)」の提供を行うという内容だ。
■有望領域の自動運転開発用シミュレーター
V-Drive Technologiesは、BIPROGYで長年培ってきたCAD・CAM・CG分野でのノウハウや実績を生かし、シミュレーター製品とサービス提供、運用プラットフォーム基盤の開発と運営を支えていくという。
さらに、将来的には自動運転開発を支えるセンシング系の膨大なシミュレーターと、実車走行や事故実績などのデータとのマッチングを図る「自動運転センシングのデジタルツイン」の実現に向けた取り組みを進めていくようだ。
【参考】関連記事としては「自動運転×デジタルツイン(2023年最新版)」も参照。
今後ますます重要度が増す自動運転開発用シミュレーターを手掛ける同社の、今後の取り組みと業績に注目だ。
※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。
【参考】関連記事としては「関係者必読!SIP第2期自動運転、全300ページの最終報告書」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)