電動キックボード、保険加入は義務?必須?

自賠責保険や任意保険について解説

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出典:国土交通省自動車局保障制度参事官室・公式YouTubeチャンネル

2023年7月に施行された改正道路交通法により、特定の区分の電動キックボードが公道でも走行できるようになった。

公道走行可能になったのは「特定小型原動機付自転車」に分類される電動キックボードで、16歳以上であれば運転免許不要で乗ることができる。一方、その際に保険の加入は必要なのだろうか。免許が不要のため、自転車のように強制加入とはならないと思ってしまう人もいるかもしれない。

結論から言うと、特定小型原動機付自転車を運転する際には自賠責保険の加入が義務付けられている。

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■自賠責保険に加入しなかったらどうなる?

公道走行可能な電動キックボードである特定小型原動機付自転車には、ナンバープレートの取り付けや、自賠責保険の加入が義務付けられている。そのほか、ヘルメットの着用が努力義務化されている。

自賠責保険の加入は車やバイクを持つ人全ての義務であり、電動キックボードも同様となる。加入せずに乗った場合は処罰の対象となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。

なお自賠責保険には有効期限があるため、更新手続きをする必要がある。期限満了日の1カ月前から更新可能だ。忘れることがないよう、ナンバープレートに貼られたステッカーで期限満了となる年月を確認しよう。

■そもそも自賠責保険とは

自賠責保険の正式名称は「自動車損害賠償責任保険・共済」で、交通事故による被害者を救済するための保険のことを指す。自賠責保険・共済は、交通事故により被害者を死傷させてしまった場合に、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補填することにより基本的な対人賠償を確保し、被害者を迅速に救済する制度だ。

国土交通省のサイトでは、自賠責保険は「交通事故を起こした人(加害者)から被害者への損害賠償の補填をはじめ、寝たきりや車椅子利用など、日常生活動作において介護が必要な方の介護料の支援や、重度後遺障害の方々の治療を専門とする病院の運営など、さまざまな形で被害者を救済している保険制度」と説明されている。

被害者は、加害者の加入している損害保険会社に直接、保険金を請求することができる。もし自賠責保険に加入せずに人身事故を起こした場合、損害賠償を全て自分で支払わないといけない。電動キックボード走行中の事故により他人を負傷させたり死亡させたりした場合、自賠責保険に加入していれば損害賠償に対して3,000万円を限度額とした保険金が支払われる。加害者が自賠責保険未加入の場合、賠償金の全額を支払うことになる。

ただし、自賠責保険は人身事故の損害について支払われる保険のため、物損事故は対象外となる。なお損害保険会社が行っているものを自賠責保険、共済組合が行っているものを自賠責共済というが、内容は同じだ。この記事では、まとめて自賠責保険と表記する。

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■自賠責保険の保険料は?

自賠責保険料と自賠責共済掛金は、各社一律で同額となっている。電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の保険料は、原動機付自転車(125cc以下)と同額で、下記となる。

ただし、2024年4月からは自賠責保険で特定小型原動機付自転車の保険料区分が新設される予定だ。新設が確定し、現在の保険料より安くなる場合には、以下の3つ全てに該当する契約に対して保険期間や始期日などに応じた保険料の一部が返還される可能性がある。

<対象契約>
1. 保険(共済)始期が2024年3月以前かつ保険(共済)終期が2024年4月以降の契約
2. 車種区分が原動機付自転車の契約
3. 標識交付証明書、型式認定番号標または性能等確認済シール等により、「特定小型原動機付自転車」であることが確認できる契約

■自賠責保険の補償内容は?

出典:国土交通省

自賠責保険では、被害者1名ごとに支払限度額が定められているが、1件の事故で複数の被害者がいる場合でも、被害者の支払限度額が減ることはない。

保障内容は、「死亡による損害」「後遺障害による損害」「傷害による損害」の3つに分けられる。自賠責保険による損害賠償の補填の支払限度額は、事故の被害者1人につき以下となる。なお100%被害者の責任で発生した事故(無責事故)については、相手車両の自賠責保険金の支払対象にはならない。

死亡による損害:最高3,000万円

死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、被害者および遺族の慰謝料が支払われる。葬儀費は通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用のことで100万円。被害者が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費を控除したものが逸失利益で、収入および就労可能期間、被扶養者の有無などを考慮し算出される。

被害者本人の慰謝料としては400万円が支払われる。遺族の慰謝料は、遺族慰謝料請求権者(被害者の父母、配偶者及び子)の人数により異なる。

後遺障害による損害:75万円〜4,000万円

後遺障害による損害は、障害の程度に応じて逸失利益および慰謝料などが支払われる。

神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害で介護が必要な場合の限度額は、常時介護で4,000万円(第1級)、随時介護で3,000万円(第2級)だ。またそれ以外の後遺障害の限度額は、3,000万円(第1級)~75万円(第14級)となっている。

支払いの対象となる損害は、逸失利益(身体に残した障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減)や、交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償である慰謝料などとなっている。

障害による損害:最高120万円

傷害による損害は、治療関係費、文書料、休業損害および慰謝料が支払われる。

具体的には、治療関係費は治療費や看護料、通院交通費、義肢・診断書などの費用のことだ。文書料は交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料、休業損害は事故の傷害で発生した収入の減少(有給休暇の使用、家事従事者を含む)のことを指す。

交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償として、慰謝料も支払われる。

■自賠責保険・共済を取り扱っている会社一覧

国交省のサイトによると、自賠責保険・共済を取り扱っている保険会社などは下記17社(※五十音順)になる。

自賠責保険は、損害保険会社の支店などや車やバイクの販売店などでも取り扱っている。また一部のコンビニや郵便局、インターネットでも加入が可能だ。なお、シェアリングサービスで電動キックボードを利用する場合は、運営会社が保険加入しているため、個人での加入は不要だ。

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■任意保険に加入する必要はある?

前述したが、自賠責保険は対人賠償に限られる。そのため、物損事故は対象外となり、相手の車などを損傷した場合は補償されない。さらに、起こした事故により自分のキックボードが壊れたり、自分自身がけがをしたりといった場合も補償対象外だ。また、自賠責保険は補償上限額が低く設定されているため、これのみでは賠償額がカバーできない可能性もある。

そのため、対人・対物賠償の補償が無制限であったり、搭乗者傷害の特約などがあったりする任意保険にも加入しておくと安心だ。

電動キックボード専用の保険はまだ少ないため、法律上の扱いが同じになる原付バイク用の保険を検討する方法もある。また、すでに自動車保険に加入済みの場合、ファミリーバイク特約を利用するという方法もある。

■電動キックボード向けの任意保険の事例

電動キックボードに関しては前述の通り、原付バイク用の保険を利用する方法があるが、電動キックボード向けの任意保険もある。事例を紹介していこう。

NECファシリティーズ「電動キックスクーター向けバイク保険」

出典:三井ダイレクト損保・公式サイト

NECファシリティーズは2023年8月1日から、個人を対象とする「電動キックスクーター向けバイク保険」の申込受付をウェブで開始した。電動キックボード利用者の賠償・傷害リスクをカバーする任意保険で、引受保険会社は三井ダイレクト損害保険となっている。

申補償内容は、対人・対物賠償が無制限のみのプランと、対人・対物賠償が無制限に搭乗者傷害200万円を加えたプランの2つがある。電動キックボード購入者個人がウェブで申し込み手続きを行い、最短で翌日から補償を開始することが可能だという。

■保険加入の上、交通ルールを守って走行を

特定小型原動機付自転車に分類される電動キックボードは、16歳以上なら免許不要で公道走行できるため、自転車と同じ感覚で乗ってしまう人も多そうだ。しかし、自賠責保険の加入が必須で、ナンバープレートを付ける必要があり、交通ルールも細かく設定されている。

今年7月の改正道路交通法施行後の1カ月だけでも、電動キックボードによる交通違反の摘発が400件を超えている。その半数近くが「信号無視」の違反だ。

【参考】関連記事としては「電動キックボードの事故・違反状況」も参照。

また、交差点で右折する際は、原付と同様に二段階右折をしなければならなかったり、原則として歩道ではなく車道を通行したりといった決まりがある。これまで電動キックボードで事故を起こした人の多くが飲酒運転していたという報告もある。もちろん飲酒運転も交通ルール違反となり、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金などが科せられる。

手軽で便利な乗り物である電動キックボードは、今後ますます普及すると予想されている。保険加入の上、ルールを守り安全走行で賢く利用しよう。

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▼自賠責に入らないと、電動キックボードには乗れません|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jidosha/e-scooter/

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